腎臓は再生できる?iPS細胞からゲノム編集ブタ移植まで、最新医療の現在地

今回は、透析患者さんからよく聞かれる「腎臓って再生医療でつくれるようにならないの?」という質問について、ちょっとお話ししますね。
皆さんもご存じのように、iPS細胞は、山中先生が発見して2012年にノーベル賞を受賞された、どんな細胞にもなれるすごい細胞です。でも、腎臓みたいに複雑な臓器をiPS細胞だけで完全につくるのは、まだまだ難しいのが現状です。
一方、最近すごく進歩しているのが、異種移植という技術です。これは、人間以外の動物の臓器を移植することです。「え、動物の臓器!?」って思うかもしれませんが、実は心臓手術で使われる「生体弁」は、昔からウシやブタの組織が使われていて、たくさんの命を救ってきたんですよ。
これまでの異種移植の最大の壁は、人間の体に動物の臓器を入れると、激しい拒絶反応が起きてしまうことでした。しかしエマニュエル・シャルパンティエ博士とジェニファー・ダウドナ博士が2020年にノーベル賞を受賞したゲノム編集技術「CRISPR-Cas9」のおかげで、この状況がガラッと変わりました。この技術を使えば、豚の遺伝子を自由にいじって、拒絶反応を起こしにくい遺伝子改変豚がつくれるようになったんです。
この技術はものすごいスピードで進んでいて、2022年には重い心臓病の患者さんに遺伝子改変豚の心臓を移植する手術が成功し、2024年には、透析患者さんに遺伝子編集された豚の腎臓を移植する手術が行われました。残念ながら、患者さんは1ヶ月ほどで亡くなってしまいましたが、一時的に人工透析から離脱できるなど、医学の世界に大きな希望を与えてくれました。
異種移植も、iPS細胞同様、まだまだたくさんの課題を抱えています。でも、今の段階で考えると、腎臓をゼロからつくり出すよりも、動物の臓器を「借りる」ことの方が、現実的な道なんじゃないかなと私は考えています。
いつか、透析を必要とする人がいなくなる日が来ることを、心から願っています。
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