腹膜透析の今むかし🌟腹膜透析ってなあに?

朝晩すっかり冷え込むようになりました。外来が終わって車の温度計を見ると15度を切っていて、「そろそろエアコンの暖房をつけないとなぁ」と思う季節になりました。

スタッフも上着を羽織っていて、冬の気配を感じます。

さて今日は、最近また注目されている「腹膜透析(PD)」の話を。

腹膜透析は、お腹の中の膜(腹膜)を使ってお腹の中に管(カテーテル)をいれて体の余分な水分や老廃物を出す治療です。透析液というきれいな液をカテーテルからお腹に入れて、しばらくして抜く——それだけで体の中が自然に“お掃除”されます。つまり、自分の体の中に透析装置があるようなもの。

寝ている間に自動で透析してくれる機械(APD)を使えば、昼間は自由に過ごせ、通院も少なくて済みます。

昔は「腹膜炎になりやすい」「長く続けると腹膜がダメになる」という印象が強く、そのため日本では血液透析が主流でした。

その中でも特に怖がられたのが、EPS(被嚢性腹膜硬化症)です。

これは長期透析で腹膜が硬くなり、腸を包み込んで動かなくなる病気で、お腹の張りや食欲不振、腸閉塞のような症状を起こします。

以前は“腹膜透析の終末期合併症”とまで言われていました。

しかしここ10年で状況は大きく変わりました。

透析液の改良で腹膜への刺激が減り、清潔操作の徹底で腹膜炎も激減。

腹膜機能を定期的にチェックして、限界が来る前にうまく治療を切り替えることもできるようになり、EPSは今では比較的起こりにくい合併症になっています。腹膜透析自体も安全で快適になり、「家でできる透析」として高齢の方にも選ばれるようになってきました。

これから日本はさらに高齢化が進みます。通院が大変な方や、家族と過ごす時間を大切にしたい方にとって、腹膜透析は体にも社会にもやさしい選択肢です。

正木クリニックでも、腹膜透析カテーテル(PDカテーテル)を挿入する手術体制を整えています。

エコーを使って安全に行えるよう、勉強を日々行い他施設に勉強させて頂いています。これにより、地域の患者さんがスムーズに腹膜透析を始められる環境を整備しています。

かつて“難しい治療”とされた腹膜透析が、“時代に合った治療”へと進化しているのを感じます。

寒い季節、温かい部屋でゆっくり過ごしたくなります。

透析の形も、そんなふうに「自分のペースで、無理なく、あたたかく」できる時代になってきました。

冬の空気を感じながら、医療の進歩をしみじみと感じる今日この頃です。