シャントって何?

「先生、シャントって何ですか?」—これは、日ごろ診察している患者さんからよく聞かれる質問です。シャントなんて言われても、一般の方には全くピンときませんよね。

私たち医師がいう「シャント(shunt)」とは、医学的には「短絡経路(たんらくけいろ)」のことです。

簡単に言うと、血液が本来通るべき血管とは別のルートを流れる状態のこと。いわば「正規ルートを無視したバイパス」や「近道」のようなものです。

この言葉は医療では広く使われています。

  • 例えば、心臓手術では「左心室と右心室の間に穴が開いているシャント」といった使い方をします。
  • 脳外科では、脳の水を排出するために「脳室腹腔シャント」という管を埋め込むこともあります。

そのため、私たち透析専門医は、誤解を避けるために透析に必要な血管の近道のことを「シャント」とは呼ばず、正式には「バスキュラーアクセス」と呼んでいます。

なぜバスキュラーアクセスが必要なの?

腎臓が悪くなり、十分に機能しなくなると、血液の中の不純物や余分な水分をきれいにすることができず、「尿毒症」という毒素が体に回った状態になります。

この腎臓の機能を代わりに果たすのが、人工透析です。

しかし、透析装置で血液をきれいに浄化するためには、大量の血液を勢いよく取り出して、機械に循環させる必要があります。腎臓は24時間働いていますが、血液透析は週3回 一回当たりの血液透析時間は4-5時間。つまり1週間に12-15時間だけで血液をきれいにしなければなりません。

  • 一般的な体の血管(静脈)からだと、流れる血液の量が少なすぎて、効率的に浄化できません。
  • そこで、手術によって動脈と静脈を意図的に繋げ、静脈に動脈から直接体調の血液を送り込みます。
  • すると、静脈が太く丈夫になり、十分な血液量を確保できるようになります。この丈夫になった血管が「バスキュラーアクセス」です。

つまり、バスキュラーアクセスは、透析を安全かつ効率的に行うための血管なんですね。

では、この血液をどのようにきれいにするのでしょうか?

透析の原理を簡単に言うと、体内の血液を体外に取り出し、「ダイアライザー」という特殊なフィルターに通すことです。こうして、毒素と余分な水分が取り除かれたきれいな血液が、再び体内へ戻されるのです。

正木クリニックはこのシャント、バスキュラーアクセスを増設したり、修復したりすることを主に行っています。今後この日記で詳しいことをお話できればと思います。

明日は日曜日でお休みですね。まだ日中は半そでで過ごせる陽気ですが、夜は寒くなってきましたね。体調崩さないようみなさん、お身体には気を付けてくださいね!